学習転移 (がくしゅうてんい)
「学習転移(Transfer of Learning)」とは、ある場面で身につけた知識・スキルが、別の場面での行動や遂行に生かされること。研修の文脈では「研修で扱ったことが現場で使われ、使われ続けるか」という問いに直結する。研修転移の条件(一般化と維持)、近転移と遠転移、職場側の条件を解説します。
学習転移とは
学習転移(Transfer of Learning)とは、ある場面で習得した知識・スキル・態度が、異なる場面・文脈での行動や遂行に生かされること(または影響すること)を指す。心理学者エドワード・ソーンダイクが20世紀初頭から研究を進め、教育・研修設計の中心的な課題として現在も議論が続く。
研修の文脈で問われるのは「研修室で学んだことが、職場の現実に活かされるか」という問いである。この転移が起きなければ、研修はコストでしかない。
近転移と遠転移
学習転移には「近転移」と「遠転移」がある。
近転移:学習した文脈に近い状況への応用。ロールプレイで練習した商談スキルを、実際の商談で使う。
遠転移:学習文脈から遠い状況への応用。論理的思考の訓練が、まったく別の分野の問題解決に活かされる。
遠転移は起きにくい。しかし高い価値を持つ。深い概念理解と意図的な応用の訓練が、遠転移を促す。
なぜ転移は起きにくいのか
研修の分野では、ティモシー・ボールドウィンとJ・ケビン・フォードの1988年のレビューが、転移の条件を、研修で身につけたことを職場の文脈に広げて使うこと(一般化)と、それを職場で一定の期間保ち続けること(維持)の二つに分け、転移に影響する入力として研修の設計・受講者の特性・職場環境の特性の三つを挙げた。職場で使う機会があるか、上司の支援があるかといった職場側の条件は、研修の中身とは別に転移を左右する。
なお「研修内容のうち職場で使われるのは1割程度」という数字がよく引かれるが、フォードらは2011年の論文で、これは行動を測った実証的な根拠を欠いたまま広まった一般化だと指摘している。人事の立場から、研修の定着を何が決め、どう測るかは、コラム「研修が定着しない理由」で詳しく扱っている。
ビジネスStockrとの接点
ビジネスStockrは、研修のあとに現場で試したことを本人が短く書きとめる記録を支えます。研修転移の研究では、職場で使う機会や上司の支援が転移を左右する条件として挙げられており、記録はその機会や支援を整えるときの手がかりになります。書いた中身は本人だけのもので、会社に見えるのは、記録が続いているか、週に何回書いたかといった利用状況だけです。
参考文献
- Edward L. Thorndike & Robert S. Woodworth, “The Influence of Improvement in One Mental Function upon the Efficiency of Other Functions (I),” Psychological Review, 8(3), 247–261, 1901. doi:10.1037/h0074898
- Timothy T. Baldwin & J. Kevin Ford, “Transfer of Training: A Review and Directions for Future Research,” Personnel Psychology, 41(1), 63–105, 1988. doi:10.1111/j.1744-6570.1988.tb00632.x
- J. Kevin Ford, Stephen L. Yelon & Abigail Q. Billington, “How Much Is Transferred from Training to the Job? The 10% Delusion as a Catalyst for Thinking about Transfer,” Performance Improvement Quarterly, 24(2), 7–24, 2011. doi:10.1002/piq.20108
(2026年10月確認)
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