キャリア面談の質問は、その場で考えさせないように組む

キャリア面談で「この先どうなりたい?」と聞いて、沈黙が続いた経験はないでしょうか。本人に考えがないわけではありません。ふだん言葉にしていないことを、上司や人事を前にその場で組み立てるのが難しいのです。面談は結局、目の前の業務の確認で終わり、実施した記録だけが残ります。

この詰まりは数字にも表れています。厚生労働省が2026年7月31日に公表した令和7年度「能力開発基本調査」では、正社員に対してキャリアコンサルティングを行うしくみがある事業所は48.4%でした。しくみのある事業所のうち、正社員について問題があるとしたのは68.9%で、その内訳(複数回答)は、相談を行ってもその効果が見えにくい42.2%、労働者からの相談件数が少ない41.6%、相談を受けられる人材を内部で育成するのが難しい37.1%、労働者が相談する時間を確保するのが難しい36.8%と続きます。場はつくった。けれど本人からは話が出てこず、何が変わったのかも見えない。多くの会社が、同じところで止まっていると読めます。

だから質問集は、面談の場で使う問いだけでなく、面談の前に本人に渡す問いとセットで用意します。答えの材料を本人が持って来られれば、面談の時間は材料を一緒に読み解くことに使えます。

面談の前に本人へ渡す3つの問い

面談の一週間ほど前に、次の三つを本人に渡します。答えは文章でなくてよく、それぞれ具体的な場面を一つずつ、いつ・何の仕事だったかが分かる程度に書いてもらいます。

  1. この三か月で、時間を忘れて取り組んだ仕事、または終わった後に手応えが残った仕事は何でしたか。
  2. 人から頼られた、お礼を言われた、任された、と感じた場面はどれですか。
  3. やりにくさや、もやもやした違和感が残った場面はどれですか。それはなぜだったと思いますか。

一つめは本人が力を注げること、二つめは周りから見た本人の持ち味、三つめは本人が大事にしているものの手がかりです。三つめを入れるのは、違和感の残った場面に、本人が手放したくないものが隠れていることがあるからです。ここで「将来の目標」を聞かないのがこつです。将来は、過去の場面が並んだあとで、面談の中で一緒に考えます。

節目ごとに使う、面談の場の質問

面談の場では、本人が持ってきた場面を入口に、節目に合わせた問いを足します。どの節目でも、最初の問いは「書いてきた場面のうち、いちばん話したいのはどれですか」で始めると、話の主導権が本人に渡ります。

入社2年目前後の面談では、仕事を覚える段階から、自分の役割を探す段階への移り目を扱います。

  1. 一年前の自分と比べて、任されるようになったことは何ですか。
  2. 今の仕事の中で、もっと深めたい部分と、人に渡してもいい部分はどこですか。
  3. 半年後、どんな仕事を任されていたいですか。

昇格の前後、とくに初めて部下を持つときは、成果の出し方が変わることを本人と確かめます。

  1. これまでの成果は、自分のどんな動き方から生まれていましたか。
  2. そのうち、部下に任せることになりそうなものはどれですか。
  3. 任せたときに、いちばん気になりそうなことは何ですか。

専門職と管理職のコースを選ぶ時期には、二択で聞かないことが大切です。どちらが得かではなく、何を手放せないかを聞きます。

  1. 書いてきた手応えの場面に共通しているのは、腕を振るうことですか、人や仕組みを動かすことですか。
  2. どんな仕事を手放すことになったら、いちばん惜しいと感じますか。

異動の直後や、育児・介護からの復職のときは、変化そのものを話題にします。

  1. 前の職場(休む前)と比べて、変わらずに使えている力は何ですか。
  2. まだ慣れないことのうち、周りに頼みたいことは何ですか。

節目面談そのものの考え方や、日常の1on1との使い分けは、用語集の節目面談の項にまとめています。

聞く側が避けたい三つの聞き方

一つめは、いきなり将来を聞くことです。先に過去の場面がそろっていないと、答えは「特にありません」か、その場で考えた模範解答になります。

二つめは、評価の話と混ぜることです。先の調査で、しくみのある事業所に正社員への実施時期(複数回答)を聞くと、定期的に実施する55.2%、労働者から求めがあった時49.6%に次いで、人事評価のタイミングに合わせて実施するが47.4%、昇進・異動・職場復帰などの節目に実施するが31.4%でした。評価面談と同じ日に行うこと自体は効率的ですが、その場合は前半と後半をはっきり分け、キャリアの時間には査定の話を持ち込まないと最初に伝えます。違和感の場面を正直に話してもらうには、それが評価に響かないと本人が思えることが前提になるからです。

三つめは、答えをまとめてしまうことです。本人が言葉に詰まったとき、聞く側が「つまり管理職志向だね」と言い換えると、本人はその言葉に乗ってしまいます。まとめの一文は、面談の最後に本人に書いてもらいます。

面談と面談の間を、本人の記録でつなぐ

事前の三つの問いに答えるのが難しい人は、少なくありません。三か月前の手応えを思い出すには、そのときに何かが残っている必要があるからです。キャリア面談を年に一度の点検で終わらせないための鍵は、面談と面談の間の日常にあります。

ビジネスStockrは、その日常の記録を支えるサービスです。仕事の場面を短く書くと、AIが問いを返し、本人が自分の判断や手応えを言葉にするのを手伝います。書いた中身は本人だけのもので、会社に見えるのは、記録が続いているか、週に何回書いたかといった利用状況だけです。面談の前に、本人がその中から場面を選んで持ってくる。会社が中身を読まないから、違和感の場面も書き残せます。面談で使う質問が同じでも、本人の手元にある材料が変われば、面談で交わされる言葉が変わります。

参考文献

厚生労働省「令和7年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」2026年7月31日公表(調査結果の概要 キャリア形成支援について p.25〜p.30)。https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html

(2026年10月確認)