1年目は見えていたのに、2年目になると見えなくなる
新入社員研修、メンター、月1回の面談。入社1年目の社員には、多くの会社が手厚い仕組みを用意しています。ところが2年目に入ると、それらは一斉に終わります。業務はひとり立ちし、配属先の上司も忙しい。人事から見ると、2年目の社員がいま何を考えているのかが、急に見えなくなります。
私たちが人事・育成担当の方とお話しするなかでも、ここ数か月「2年目のフォローをどうすればよいか」というご相談が続いています。1年目の施策は整ってきた。けれど2年目以降は、何をすればいいのかの手がかりがない。その感覚は、多くの会社に共通しているようです。
2年目の離職は、1年目とほぼ同じ割合で起きている
厚生労働省が2026年10月23日に公表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、2023年3月に大学を卒業して就職した人のうち、3年以内に離職した人は31.2%でした。前年から2.6ポイント下がってはいるものの、およそ3人に1人という水準は変わっていません。
注目したいのは、その内訳です。就職後1年目に離職した人が11.0%、2年目が10.9%、3年目が9.3%。2年目の離職は、1年目とほとんど同じ割合で起きています。
一方で、育成の手間と予算の多くは1年目に置かれています。それは自然な設計ですが、統計を並べてみると、支援の厚みと離職の起きやすさのあいだに、ずれがあることがわかります。2年目は「もう大丈夫な時期」ではありません。1年目と同じくらい、人が離れていく時期です。
2年目に起きているのは、意欲の低下ではなく「問いの変化」
2年目の社員の様子を「中だるみ」「意欲の低下」と表現することがあります。けれど、本人の内側で起きていることを丁寧に聞いていくと、別の姿が見えてきます。
1年目の問いは「どうやるか」でした。仕事の手順を覚え、言われたことをこなし、職場に慣れる。悩みがあっても、それは業務の範囲に収まっていて、OJTや先輩の助言で答えが出ます。
2年目になると、問いが変わります。「この仕事を続けて、自分は何を積み上げるのか」「ここに居続けていいのか」。手順が身についたからこそ、仕事の意味や自分の先行きに目が向くのです。これはキャリアの問いであり、業務の延長の助言では答えにくい種類の問いです。
問いが変わったのに、それを言葉にする場がない。2年目の停滞は、この組み合わせから生まれます。本人の適応力の問題ではなく、接点の設計の問題だと捉えると、打ち手が見えてきます(構造の整理は用語集の2年目問題にまとめています)。
接点を戻すより、言葉にする機会を日常に置く
では、1年目と同じ頻度で面談を続ければよいのでしょうか。2年目の人数と現場の負荷を考えると、それは現実的ではありません。必要なのは接点の総量を戻すことではなく、日常の中に「自分の仕事を言葉にする機会」を置き、少ない面談をその言葉で深くすることです。
この考え方には研究の裏づけがあります。HEC Paris のジャダ・ディ・ステファノ氏とハーバード・ビジネス・スクールの研究者らは、インドの大手業務受託企業で研修中の従業員を対象に現場実験を行いました。研修の毎日の終わりに15分間、その日に気づいたことを書き出したグループは、最終の研修テストでほかのグループより23%高い成績を出しています。2023年に改訂されたこの研究の論文では、ふりかえりの効果は、仕事を覚え始めた初期の段階ほど大きいことも示されています。入社2年目は、まさにその段階にあります。
日常に置く仕組みは、次の三つがそろうと続きやすくなります。
一つ目は、1日数分の短い記録です。題材は大げさなものでなくて構いません。「今日いちばん手応えがあった判断」「1年前の自分ならできなかったこと」「引っかかったまま終わったこと」。こうした小さな題材を書き続けると、数十日分の記録の中に、本人が何にやりがいを感じ、どんな場面で力を出しているかの傾向が浮かび上がってきます。
二つ目は、記録に応答が返ってくることです。書きっぱなしの記録は続きません。観点を変える問いやコメントが返ってくると、内省が深まり、習慣にもなりやすくなります。上司がすべての記録に返事をするのは難しいので、ここはAIのような仕組みが担える部分です。
三つ目は、記録の中身が本人のものであり続けることです。上司や人事に読まれると思えば、人は「見せるための文章」を書きます。それでは2年目の本音の問いは出てきません。会社に見えるのは「続いているかどうか」という状態だけにして、中身は本人だけが持つ。この線引きがあって初めて、記録は本人のための言葉になります。
2年目の面談を「現状確認」で終わらせない
日常の記録は、面談の材料になったときに意味が変わります。
おすすめしたいのは、面談の前に本人が自分の記録を読み直し、この1年で「できるようになったこと」を三つ書き出してくる、という一手間です。2年目の社員は、自分ができるようになったことを過小評価しがちです。毎日の記録があると、「そういえば半年前はこれに一日かかっていた」という事実が本人の言葉で出てきます。
書き出したものは、キャリア面談でよく使われるWill-Can-Mustの「Can」の欄にそのまま置けます。やりたいこと(Will)が言葉にならなくても、できること(Can)が具体的になると、面談の会話は「最近どう?」の現状確認から、「次に何を任されたいか」の対話に変わります。Will-Can-Mustの書き方や、三つが重ならないときの考え方は、当社が運営する自己分析マップのWill-Can-Mustの解説で紹介しています。本人に渡す案内としても使えます。
面談を担う上司の問いも、ひとつ変えるだけで深さが変わります。「困っていることはある?」ではなく、「この1年で、いちばん自分らしく働けたのはどんな場面だった?」と聞いてみてください。記録がある人ほど、具体的な場面で答えが返ってきます。
進め方の目安は3か月です。最初の1か月で記録を始め、2か月目の終わりに本人が自分の記録を読み直して気づいたことを一言添え、3か月目にその言葉を持って面談に臨む。新しい制度をつくる必要はなく、既存の面談の前に「言葉の準備期間」を置くだけです。
2年目は、最初のキャリアの節目
2年目の問いは、実は中堅社員の停滞とよく似ています。手が離れたあとの日常に、自分の仕事を言葉にする機会がない。だから「ここに居続けていいのか」という問いに、本人自身の答えが出ない。違うのは、その問いが最初に訪れるのが2年目だということです。
そう考えると、2年目の支援は早期離職の対策であると同時に、その後のキャリアを自分でつくっていくための最初の練習の場でもあります。2年目に身についた「日々の仕事を言葉にする習慣」は、昇格の前後や専門職か管理職かを選ぶとき、次の節目で本人を支えます。
ビジネスStockrは、日々のふりかえりにAIが伴走し、記録の中身は本人だけのものに、会社には続いているかどうかの状態だけが見える形で提供しています。2年目フォローの設計や、ふりかえりの型を身につける研修のご相談も承っています。
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)」2026年10月23日公表/Di Stefano, G., Gino, F., Pisano, G. P., & Staats, B. R. "Learning by Thinking: How Reflection Can Spur Progress Along the Learning Curve" Harvard Business School Working Paper(2014年初版、2023年改訂)
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